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Fractal Audio AX8研究:パッチ切り替え速度、音切れについて

先日Twitterにアップした内容を軽くまとめ。Fractal AudioのAxe-FX II(ラックタイプ)と、AX8(フロアタイプ)の音切れの比較です。ここでいう音切れ、とはディレイやリバーブのスピルオーバーの話ではなく、空間系を差し引いての音切れです。

Axe-Fx IIでの音切れ

まずFractal Audio Axe-FX IIでは
・プリセット切り替えでの音切れは若干生じる。
・シーン切り替えで音切れは最小限に抑えられる。
・シーン切り替えでも、アンプのX/Yやあるいは音量パラメーターをシーンコントロールで変えるとプリセット切り替えと同じくらい音切れする。
・アンプの音色切り替えで一番音切れが少ないのはアンプを2台並べて、直後にボリュームゼロにしたFilterなどを挟んでそれのオンオフで2台切り替えるという手法。
(他にベストな方法あったら教えてください。)

という感じで基本「シーンの切り替えでは音切れは少なく、プリセット切り替えでは音切れ多い」というのが自分の中の定説でした。

AX8での音切れ

今はAxe-FX IIは所有しておらず、AX8しか持っていません。同じことをやろうとしても、まずアンプ2台置けないので、シーンでX/Y切り替えをする事にしてました。ところが、これがものすごい音切れがする。666msecくらい。と言ってもピンと来ないのでBPM180で言うと2拍くらい。(ここの数値は後述にて詳しく解説します) 最初はCPUもAxeより弱いAX8だから仕方ないか、と思ってたんですが本番の緊張感の中で使うと、これがまた遅い遅い。止まってるのかと思うくらい遅かったのです。

これはどうしたものか、シーン切り替えでもこのレイテンシーか、と愕然として「AX8ダメだな…」くらいに思ってました。

ところが、

ふとした時に、気づきました。
「あれ、プリセット切り替えの方が早くない?」

実は早いと思ってたシーン切り替え(説明書にもそう書いてある)よりプリセット切り替えの方が早い事に気づきました。正確に言うとシーン切り替えは確かに早いです。歪みペダルとディレイがオンになる、くらいの場合は。

ところがクリーン用のコーラスやらなんやらをたくさんスタンバイしてCPU限界ギリギリまで使っているプリセットの中で、ガラッと一定数以上のエフェクトオンオフをシーンで一括切り替えすると、また異常なまでの音切れ。

録音して検証してみた

これは体感的なものか? 録音して検証してみよう。
というわけでRECしてみましたのがこちら。

ざっくり自分用に録ってただけですので、みづらいのですが、上から
・CPU90%状態の2つのプリセット間の切り替え
・CPU59%状態の2つのプリセット間の切り替え
・CPU55%状態のプリセット内のシーン切り替え
・CPU80%状態のプリセット内のシーン切り替え
・CPU90%状態のプリセット内のシーン切り替え

興味深い結果ですね。プリセット間の切り替え速度はCPU負荷の重さに関係なくほぼ一定であるのに対して、シーン切り替えはCPU負荷が大きければ大きいほど遅くなるのです。CPU負荷の低い状態(例でいうと55%)ではプリセット切り替えより高速ですが、80%の時点でプリセット切り替えより遅くなり、90%ではその2倍以上の遅さになります。

この画像のグリッドはBPM180なので、1拍分が約333msec。プリセット切り替えだと200msec弱の音切れに対して、CPU負荷が高い状態でのシーン切り替えは約666msec! 3倍以上の開きがありました。

結論

というわけで結論的には、
「プリセット切り替えにしとけ」
って感じです。プリセット切り替えの200msecは割と許容範囲です。また新しい発見があったらご報告させてください。自分も研究中の身ですので、こっちの方が早いよ、とかこんな方法あるよ、とかありましたら是非ともご教示お願いいたします。ではでは。

 

2018年追記:

実はひっそりとシーン切り替えに変えました。理由はやはり音が切れるのが気になるのでなるべくCPU負荷を削減したプリセットを1つ作りました。クリーンは理想ではコーラス系をパラレルで複数かけたりしたいのですが、そこはぐっと我慢してコーラス1つのみにしたりしてます。こだわりは大事ですが、ライブにおいては細かい音色の差より、違和感なく流れる方が重要だなと思いまして。