ヤングギター2019年8月号でマルチエフェクター、MOOER GE300の機材レビューを執筆させていただきました。文字数の都合上そちらではご紹介できなかったサウンドメイクのポイントを個人的にご紹介します。
PR記事では無い自主的な記事なのでフラットに、GE300を使っていつもの自分のサウンドを作るにはこうしました、という記事内容です。GE300以外にも応用できる部分が幾分かあると思いますのでご参考にしていただけましたら幸いです。
細かい機能的な説明はヤングギターの記事や、他の方のレビューを参照していただくとして、自分の個人的な音作りポイントを中心に紹介いたします。まず記事用に3つのプリセットを作りました。
・バッキング用ディストーション
・リード、ソロ用ディストーション
・クリーントーン
その中でもメインのバッキング用のディストーションサウンドの細かいポイントをお伝えしたいと思います。実際のサウンドは、こちらのリアンプ動画でご確認ください。
演奏と撮影はだいぶ前に録ったものです。原曲は自分の「BLACK ALBUM 2」というアルバムの2曲めに収録されている「From Hell to Breakfast」という曲です。
個人的ブログなのでアーティスト名や元となってるアンプモデル名なども出していこうと思いますが、完全にDream TheaterのJohn Petrucciに影響受けまくりサウンドです。バッキング用のトーンでEの開放弦を弾けばPull Me Under、クリーントーンはタップしたフロントとリアのPUのハーフトーンで弾けば、気分はAnother Dayです。(個人の意見です)
・アンプセクション
使っているブロックはDS/OD, AMP, EQ, Cabです。
アンプとキャビはMesa/Boogie系でまとめてます。かつては「カルフォニア系アンプ」みたいな感じでひとつにまとめられがちでしたが、Mesa/Boogieだけでもめっちゃ種類あって信者としては嬉しい限り。
Cali LS:Lonestar
Cali Dual:Dual Rectifier
TRI REC:Triple Rectifier
MARKIII:Mark III
Cali MK4:Mark IV
MARKV:Mark V
Cali JP:JP2C
Mesa/Boogie系のキャビは以下の通り
Mark 112:Mark112 1×12
Rec 412:Rectifier Standard 4×12
Cali 412-1:Recto Trad 4×12
Cali 412-2:RoadKing 4×12
今回のプリセットでは「MARKV DS」と「Cali 412-1」を選択しました。好きなのはJohn Petrucciのサウンドですが「Cali JP」より「MARKV」の方が好きでした。これは好みの問題です。
この段階でアンプブロックに戻り別のモデリングを選びなおしたり、キャビネットを別のものにしたりと行ったり来たりして、もっとも好みに合うものを選びます。使うアンプモデリングとキャビネットが決まったら細かいパラメーターのエディットしていきます。
GainやEQはとりあえずデフォルトの50からスタート。Midを削り抜けを良いドンシャリサウンドにする〜、みたいなメタルの基礎的な部分はさておき、より踏み込んだパラメーターのエディットを解説します。
まずModeは「Distinct」を選択しました。これは、プリアンプインプット前に上下の帯域をカットし、プリアンプアウト後に中高域を削るEQを挿入したトーンにすることが出来る、みたいです。より締まったサウンドになる、という印象ですね。
Tubeはパワーアンプ部分の真空管を選ぶ項目で、ここでは「Normal 6L6」を選択。アンプモデリングと揃えた「Cali 6L6」にしてみたら、より低域がプッシュされたサウンドになったかなぁと。リアルで使ったことがあるのが6L6だけなのでそれを選んでますが、出音重視で好きなのを選ぶので良いと思います。どの組み合わせが合ってる間違ってるとかはないです。それがデジタルの最大のメリット。
Biasはパワーアンプの真空管バイアスを再現するパラメーターで、値を上げていくと噛み付きのあるようなサウンド、英語でいうとSpongy?(弾力性のある)サウンドになっていく印象です。シミュレーションでサウンドを体験してから、同名のリアルアンプで音を出すと色々新しい発見がありオススメです。
・キャビネットセクション
この後もキャビとアンプを何度か往復して詰めていきます。キャビのマイクをデフォルトのSM57に別マイクの要素を足したかったので、Mic2ではMD421を選択しました。Center2(マイクの位置、センターからの距離)を上げることで、コーンの外側をマイキングした低音重視のサウンドにして、これをSM57のブライトな音と混ぜる、という定番パターンです。これも実際にやったことのある、持ってるマイクで、他をあんまり知らないから、という理由です。でも自由に組み合わせして良いと思ってます。位相を気にしなくても良いのも楽ですね。
>>ボタンを押し次のページに進みMic1 Mic2でそれぞれのマイクの比率を調整します。50/50でちょうど均等。まずは100/0でSM57のサウンドを確認して、徐々に混ぜていきます。Pointsというのはキャビネットモデルのサンプリングポイントを調整する値となり、高い値ほど精度が高くなり、低い値ほどCPU%の消費が少なくなります。
・ブースターと補正EQ
これで基本のサウンドは出来て来たので、アンプブロックの前段にDS/ODブロックをブースターとして追加します。TS9系のオーバードライブを使う事も検討しましたが、いくつか試した結果、味付けの少ない「Pure Boost」を使用することにしました。Gainはほぼゼロに近く、Outputを多めに上げて、アンプブロックに入力される前の信号の上と下の帯域をすっきりさせると同時にアンプに対して過入力状態にさせる事で抜けの良いサウンドと深い歪みを実現しています。ブースターを挟む事で歪みの量が増えるのでアンプ側のGainは少し下げめに設定。実際のアンプでは歪みを上げれば上げるほどサーというノイズが増していくので、ノイズサプレッサーはアンプブロックの後に欲しいところですが、本機はさほどノイズが気になることはありませんでした。もちろんエフェクトブロックをたくさん繋げてもノイズが増すことはないので、このあたりもデジタルマルチエフェクターの利点ですね。
最後にもう少し歯切れを良くするために、EQで微調整を加えました。理想であればMarkシリーズに搭載されている5バンドEQがあったら良いのですが、それはなかったので普通のグライコで近い帯域を選択しています。750Hzを多めに削って、パームミュートした際のズンズンくる帯域、108Hzあたりを少しだけ足し、ブライトさを出す6600Hzあたりを少しブーストしました。
以上にひとまず完了。もし楽曲ええやん、ってなったらアルバムも見て言ってもらえたら嬉しいです。余力があったらリードとクリーンの解説もします。ではでは。